6/1の京都市バス・ダイヤ改正について取り上げます。3月に公表されていたものですが、当ブログではまだ取り上げていませんでした。
令和6年6月実施の市バス新ダイヤ
市バス新ダイヤ、別紙
全体的な感想を簡単に述べると、昨今の運転手不足が叫ばれながらも、全体的な車両数を801両から810に増強し、観光客向けの系統復活や、市内中心部に関しては増便が実現し、久しぶりに積極策が見られる一方で、郊外部の路線に関しては減便となるなど、明暗が分かれたように思えます。
以下、主な内容とともに私見も述べていきます。
観光特急バスの新設などによる、観光利用と市民利用のすみ分け
◎観光特急バスを2つのルートで運行(通年、土休日運行)・EX100:京都駅前~五条坂(清水寺)~祇園~岡崎公園 美術館・平安神宮前~銀閣寺前
・EX101:京都駅前~五条坂(清水寺)
※前乗り・先払い。運賃500円(子ども250円)
※地下鉄・バス1日券、京都修学旅行1dayチケット利用可能。定期券、回数券、敬老乗車証、福祉乗車証利用不可。
▲観光特急バスの概要、京都市交通局のリリースより
◎他に楽洛ライン運行
・楽洛金閣寺・銀閣寺ライン102:北大路バスターミナル~金閣寺道~銀閣寺道~錦林車庫前(区間急行、通年・土休日運行)
・楽洛岡崎銀閣寺ライン105:京都駅前~四条河原町~岡崎公園 美術館・平安神宮前~銀閣寺前(通年・土休日運行)
・楽洛東山ライン106:京都駅前~五条坂(清水寺)~祇園~三条京阪(通年運行)
・楽洛金閣寺嵐山ライン109:北大路バスターミナル~金閣寺道~大覚寺~嵐山(急行、GW・秋の繁忙期運行)
▲観光系統の路線図、京都市交通局のリリースより
観光客向けに特化した、観光系統の新設は今回のダイヤ改正の一番の目玉とも言えるでしょう。
以前は、100番台の観光系統で洛バス・急行バスとして、観光客向けに特化し、主要な観光地や鉄道との乗り換え駅等のみに停車する停留所を絞った系統がありました。
コロナ禍で全て休止となり、水際対策の撤廃により、インバウンドの観光客が戻っている、現在でも復活には至っていません。春や秋の時期など、観光客の多い時期に臨時の系統を運転して、凌いでいるのが現状です。
観光系統が全便運休中で、全く使われていない京都駅前のD1番のりば
この観光系統は観光客向けに特化していることもあり、観光客にとっては非常に便利な系統でした。また、オーバーツーリズムの問題が指摘される中、地元市民にとっては、観光客が観光系統に乗車してくれることにより、他の系統を利用しやすくなり、上手いこと両者を分離するには、観光系統の復活は絶対に必要とも言えましたが、ようやく形を変えて復活することになります。ただし、観光系統の多くは土休日のみ運行となっていて、平日の運行がほとんどない点は残念なところです。以前の観光系統は平日でも運行していましたが、昨今の運転手不足などが影響しているのでしょうか。特にインバウンドの観光客は平日・土休日問わず、多く訪れ、バスも混雑することが多いだけに、平日もより多くの運行が望まれます。
それに、系統番号は同じ100番台となるものの、以前の急行バスと比べると、特にEX100とEX101はより観光客向けに特化した系統となっていることもあり、異なる点もあるので、要注意です。
EX100とEX101を利用する際に注意する点としては、
①運賃は500円(その他の系統は230円)
②ICカード、地下鉄・市バス1日乗車券の利用は可能
③定期券・回数券・敬老乗車証・福祉乗車証は利用不可
④停車停留所をより絞っている(その分、京都駅~清水寺~祇園~平安神宮~銀閣寺をより速く移動することが可能)
続いて、観光系統以外の市民が日常的に利用する系統に関して、見て行きます。
ルート変更等を行う系統
・19、22、南8、58、43、81、84、85、南1、M1、86、88
※43系統は臨13系統を統合
例えば、19系統は昼間は京阪国道ではなく、より住宅地に近い千本通経由に変更、81系統は全便が竹田駅経由に変更(現在は朝の一部が竹田駅を通らない)などが行われ、通勤通学や買い物、通院利用の実態に応じた変更が上記の系統で行われます。
便利で使いやすいダイヤ編成
以下の通り・区間で、異なる系統でも系統間のダイヤ調整を行い、待ち時間が少ないダイヤ編成に。
・丸太町通・西ノ京円町~嵯峨瀬戸川町:昼間は91+93を10分間隔で運行
・河原町通・京都駅前~四条河原町~河原町今出川
余談ですが、大手筋通と言う名称、「筋と通は同じ意味であって、両方は要らんやろ」と突っ込みを入れたくなります。ちなみに、大阪の御堂筋で御堂筋通なんて言い方はしません。
市内中心部の循環系統・幹線系統の増便
対象の系統:201、203、205、206、207、3、4、5、7、9、12、46
朝ラッシュ時間帯に快速系統新設等
他の政令指定都市と比べても、鉄道空白地帯が多く、バスに頼らざるを得ないエリアが多い、京都市内において、主要な停留所のみ停車する、速達性を高めた快速系統は必要であると前から感じていて、今回一部で増便が実現しますが、まだまだ少ない気がします。運転手不足などを考えると、難しい問題かもしれませんが、さらなる快速系統の増便が待たれます。
洛西エリア・洛西ニュータウンエリア
・西2・西4:洛西バスターミナル~桂駅または洛西口駅・桂川駅を最短10分で結ぶ
・西3・特西4:洛西ニュータウン内の移動を便利に
・西9:大原野エリアから洛西口駅・桂川駅を結ぶ
・樫原エリアの新山陰街道で西2・西3・西8の3系統の運行間隔を調整
・桂坂エリアでは運行パターンの変更とともに、桂坂エリア~桂駅で定期券・福祉乗車証で京阪京都交通のバスにも乗車可能となる他、運賃制度もシームレス化により市バスと京阪京都交通両方を利用できることによる利用チャンスの増加
近年、京都市が洛西ニュータウンエリアの活性化に力を入れていることに合わせて、バスの利便性を高めるダイヤとなっています。
ただ、この洛西ニュータウンに関しては、高齢化と人口減少、オールドタウン化が叫ばれ、失敗したニュータウンの例とも言われています。理由は何と言っても、地下鉄東西線の延伸がニュータウン開発から50年ほど経った、現在でも実現していないことが全てと言ってもいいでしょう。ニュータウン開発当時は地下鉄東西線の延伸を期待して、移住した住民も多く、結果として住民の期待を裏切る形になったと言えます。これにより、現在でも洛西ニュータウンが陸の孤島であることに変わりありません。21世紀に入り、洛西口駅や桂川駅の開業により、少しは改善されたとは言え、これら2駅から歩いて行ける距離ではありません。やはり、ニュータウンを開発するには、アクセスする鉄道の整備とセットで行わなければ意味がありません。
あと、京阪京都交通との定期券の共通利用などに関して、今まで共通化が行われていなかったのは不思議なほどです。利用者からすれば、同じルートを走っているなら、バス会社などは関係ない訳であって、これが実現できなかったのは単に事業者ごとの縦割りの弊害と言わざるを得ません。
ただし近年、京都市は京都バス、京阪バス、JRバスと言った、民間バスと連携し、運賃制度の統一化や定期券の共通利用に、地下鉄バス1日券も利用可能とするなどの取り組みにより、改善へと向かっていると言えます。
今回これにようやく京阪京都交通も加わろうとしていると言えますが、京阪京都交通に関してはまだ地下鉄バス1日券は使えません。京阪バスと京阪京都交通、会社名も同じ京阪電車のグループ会社であって、バスの外観のカラーリングもほとんど変わらないのに、1日券に関しては前者は利用可能なのに、後者は利用不可とか、混乱を生んでいるのは明らかです。しかも両社の運行路線は京都駅や梅小路近辺では重複もしていて、余計に混乱の元となっていると言えます。1日券で京阪京都交通も利用対象に入れることが急がれます。
利用状況に応じた運行回数見直し
・対象系統:1、8、11、15、16、18、特18、19、20、22、26、27、特27、29、32、33、46、50、51、55、65、85、75、81、84、91、93、北1、北8、南1、南2、南3、南6、南8
※減便の際には、パターンダイヤの維持、他の系統とのダイヤ調整、鉄道駅への接続強化、最低でも1本/hの運行は維持するなど、可能な限り利便性を確保。
市内中心部では増便などが見られる一方で、やはり郊外部では減便となり、ここでは厳しい点が感じられます。それでも可能な限り利便性維持に向けた施策が見られると言ってもいいでしょう。
系統番号の変更や表示の充実等
・京都バスと重複する系統番号の変更
17⇒7、73⇒23
・「臨」と表示している通年運行する系統の番号を変更
臨南5⇒南6
・漢字を使用している系統にアルファベットを表記
「特」⇒Tを追記
「北」は「North」、「南」は「South」、「西」は「West」をそれぞれ表示
これらに関しては、長年疑問に感じていたことがやっと解消されると言えます。
まず73系統に関しては、市バスと京都バスで向かう方向が全く異なるにも関わらず、同じ番号を名乗っていて、京都駅のバス乗り場には大きな注意書きもあるほどで、「そんなことするなら系統番号を変えろ」、と何度も感じていました。
あと、系統番号に漢字を使っているのは、外国人からすれば、「何のこっちゃねん、アルファベット表記を追加してくれ」と突っ込みたくなるところでしたが、今回解消されます。ちなみに、首都圏のバスでは番号の前に漢字表記が目立ちます(例として渋谷駅発着の系統に「渋01」など)。これも、前にアルファベットを表記するなど、改善が望まれます。


















