この春、JR奈良線に約35年ぶりとなる、臨時特急”いにしへ”が走ることになり、乗ってきました。
京都駅にて、臨時特急”いにしへ”に使われた、”くろしお”用の289系。奈良線に特急が走ることは長年なく、珍しい光景なだけに多くの人がカメラを向けていたのが印象的。しかも、前面には国鉄式のヘッドマークと逆三角形のシンボルマークも。JR西日本の特急列車、特に287系・289系は何のマークもなく味気ないだけに、日頃から何かしら装飾が欲しい。

①今回の運行予定など
まずは、JR西日本から公表された、こちらのリリースから今回の運行予定などを。
この春、JR奈良線に臨時特急「いにしへ」号が登場!
②指定券の確保

そんな歴史的なことでもありますので、ぜひこの運行期間中、可能なら運行初日に乗車することができればと思い、早速e5489にアクセスし、指定席を取ろうとしますが、空席状況を見ても、やはり珍しさがあるのか、なかなか指定席が取れません。
ただ、ここで諦めるのはまだ早く、キャンセルが出ることはあり得るので、粘り強く頻繁にe5489にアクセスしたところ、運良く4/19の京都行きの指定席が取れたので、これに乗ることにしました。
駅の窓口や券売機なら特急料金が1,290円のところ、ネット予約のe5489チケットレスを使うと、ほぼ半額の650円。これはもう、e5489のチケットレスを利用しないと損です。ただ、乗車券に関しては別にきっぷやICカードを用意しないといけないので、完全なチケットレスとは言えないところが残念です。こう言ったところが、日本の鉄道でネット予約やチケットレスの普及の妨げになっているところは明らかなので、やはり乗車券部分も含めて、ネット予約をすれば、あとは自宅プリンターで印刷するか、アプリでQRコードを表示させるだけで乗車できるようにすることを、急ぐ必要があると感じます。
③実際に乗車、その前の奈良散策など
JR奈良駅から特急”いにしへ”乗車の前に、奈良を色々と散策してみようと思い、奈良公園や東向商店街、ならまちなどを散策しました。観光客が多く、大部分は外国人でした。ただ、京都ほどの混雑ではなく、京都に比べると、まだオーバーツーリズムの問題は少ないと言えます。
奈良公園のシカ

東向商店街を歩く

関西の方には説明するまでもありませんが、関西以外の方には近鉄奈良駅との間違いには注意です。近鉄奈良駅とJR奈良駅は徒歩で約15分・約1km程度離れていて、奈良公園や東大寺など、奈良市の中心部に近いのは近鉄奈良駅です。JR奈良駅は中心部からは少し外れたところにあります。近年は近鉄奈良駅には奈良公園前と言う副駅名が付けれれましたが、個人的にはJR奈良駅との混同を避けるには、正式な駅名を奈良公園前に変更することが望ましいと言えます。
近鉄奈良駅の副駅名に「奈良公園前」を設定します
15:30頃にはJR奈良駅に戻り、本題の臨時特急”いにしへ”に乗車することにします。
かつてのJR奈良駅の駅舎は高架化とともに駅としての役割は終えたが、現在は観光案内所として使用

改札付近の発車案内表示、京都方面は臨時特急の表示。大阪方面には近年定期化した”まほろば”の表示も。将来的に、”まほろば”と並んで、定期化もあり得るのでしょうか?この春から走り出した、”まほろば”の専用車両のPRも。10年ほど前にこのような特急の表示が並ぶこと、誰が想像したでしょうか?

ホームの発車案内表示、臨時特急の表示。

使用車両は289系だが、奈良線では221系・205系が主流なこともあり、今の時代にあってもインバータ車両が走ることが日頃はないので、奈良線でインバータ車両が走ることもまた歴史的と言える。

国鉄式の逆三角形シンボルマークとヘッドマークにズームイン

車両の表示は”特急 京都”

偶然居合わせた利用者が、指定席特急券なしでは乗れないことなど、乗り間違いがないよう、何度か放送が流れてました。京都~奈良と言うこともあり、外国人も多いことから、英語や中国語でも放送が流れていました。
奈良駅の駅名標とともに

16:14、定刻通り、奈良駅を発車。奈良駅の駅員から横断幕で見送られます。”奈良を離れるのに、ようこそちゃうやろ”、と少し突っ込みたくなりますが(笑)

指定席は満席でしたが、実際には少しだけ空席があったので、直前のキャンセル等が出たのでしょうか?多くは鉄道好きな方が中心と言え、さすがに一般の利用者にはまだ認知されていない、と言ったように思えます。
車内、特急”くろしお”と何ら変わらない

車内放送ですが、特急”くろしお”のような一般的な自動放送ではなく、AI音声の放送を日本語・英語で事前に録音し、それをタブレットから車内放送マイクで拾って、放送する仕組みだったようです。臨時であれば、肉声放送のみとなるところ、そこまですると言うことは、将来的に走らせる予定があるのでしょうか?京都~奈良は外国人の利用も多いことから、英語放送まで用意した点は評価できます。
今の時代、指定席に指定された席に座っていれば、車内改札はありませんが、今回は上述の通り、記念乗車証が配られました。

途中の車窓は、日頃の奈良線と何ら変わりありませんが、このように特急車両から眺めるのは何か非日常なところがあります。特に、快速も含め、全列車が停車する木津・玉水・城陽・六地蔵・東福寺を営業列車が通過することは、日頃の奈良線なら絶対にあり得ないだけに、こちらも非日常です。そして、途中の沿線でも奈良線に特急が走ることは珍しいこともあり、多くの人がカメラを向けているのが印象的でした。
国鉄分割民営化以降、奈良線も複線化が進み、近年は京都~城陽が全線複線となりましたが、城陽以南は現在もほとんどが単線のまま残っていて、途中、棚倉と山城青谷で反対列車待ち合わせで停車。奈良線の城陽以南は街の外れを通ることが多く、利用者も少なくなることから、城陽以北や西側を走る近鉄京都線と比べても、まだまだ格差が大きいと感じます。
城陽を通過すると、複線区間へと入り、16:45、途中唯一の停車駅である、宇治に停車。ここで少し乗り降りがありましたが、大半は奈良⇒京都を乗り通しです。宇治駅でも乗り間違いがないよう、放送は流れていたと思いますが、外国人で間違って乗ったと思われる利用者を見掛けました。
宇治駅停車中、車内の案内表示器に駅名は流れる

宇治を発車すると、宇治のシンボルとも言える、宇治橋や平等院の辺りを車窓から眺めることになるが、これも特急車両から眺めることはやはり新鮮そのもの。
快速も含め、全営業列車が停車する六地蔵駅も通過。
国鉄時代には、ここに駅すらなかったのに、今では地下鉄東西線との乗換駅となり、周囲には多くのマンションや”momo”と呼ばれる大型ショッピングセンターもあるなど、開発が進み、JR奈良線で一番大出世した駅と言えるでしょう。その分、並走する京阪宇治線の利用者減少と言う点もありますが。
六地蔵駅を通過し、山科川を渡ると京都市伏見区に入ります。先述した通り、私は京都市伏見区でJR奈良線沿線の出身と言うこともあり、ここを特急車両で通過することは新鮮そのものです。そのような通過シーンを動画で撮影しています。
桃山駅通過、伏見の街を通過する
近年は千本鳥居などが外国人観光客に人気の伏見稲荷大社が目の前にある、稲荷駅を通過。もし”いにしへ”を定期化して、観光客向けとするなら、稲荷駅にも停車と言うこともあり得るでしょうか?
伏見稲荷大社の最寄り駅、稲荷駅を通過
稲荷駅を通過すると、終点京都駅到着はすぐ。このあたりで、京都到着の放送が流れました。
東福寺駅を通過、鴨川を渡る
17:03、定刻通り、終点京都駅に到着。定期列車の合間を縫って走るようになっているダイヤと言うこともあり、通常の快速よりも時間はかかりましたが、色々と楽しんでいて、特急車両の座席と言うこともあり、あっという間に着いた感じでした。
京都駅は奈良線の8番のりばに到着。通常の列車も、のりばを変更する措置が採られていました。向日町の車庫に回送するまで、しばらく8番のりばに停車していることもあり、隣の7番のりばに移動して、撮影できる時間もあったほどです。
京都駅8番のりばに停車中

京都駅、奈良線の駅名標とともに

”サンダーバード”と並ぶ、思えば両者ともに北陸を走った車両同士

京都駅にて、”いにしへ”運転に関する告知

京都駅でも、奈良線を特急が走ることは珍しいこともあり、居合わせた多くの利用者がカメラを向けているのが印象的でした。
④定期化への可能性
さて、この臨時特急”いにしへ”。まだ試しに臨時で走り出したばかりと言うこともあり、一般の利用者への認知はまだ低いですが、今後の定期化への可能性を少し考えたいと思います。
まず個人的な推測ですが、恐らくは大阪方面の”まほろば”と同じく、まずは試しに始めてから、認知度を広め、状況を見て、徐々に定期化への可能性を探っているのでは?、と思えます。
奈良方面を見ると、ご存じの通り、近鉄特急の存在感が圧倒的なこともあり、国鉄・JRが特急を走らせても入る余地はないと言われ、長年沖縄県を除き、JRの特急(新幹線を含む)が一切走らない県にもなっていたほどです。特に、JR奈良線に関しては、近年は京都~城陽が全線複線となり、快速・普通の本数が増え、便利になりましたが、国鉄時代末期までは単線・非電化の時代が続き、京都~奈良は近鉄京都線と大きな格差がありました。
大阪方面の”まほろば”に関しては、近年のおおさか東線開通を機に、観光客向けに臨時で新大阪・大阪発着で奈良方面へ運行開始し、近年は土休日に定期化。平日には通勤客向けに”らくラクやまと”を運行の他、快速の一部座席を有料化した”うれシート”もサービス開始。さらに、この春からは北陸新幹線開業で余った車両を使って、新たに奈良向けに特化した装飾で”まほろば”専用車両を登場させるところまで来ていて、奈良方面への有料座席を強化していく施策が見られます。
正直、奈良方面の本数やネットワークに関しては、近鉄特急が圧倒的で、近鉄奈良駅の方が立地条件の良さも圧倒的です(ただ、上述の通り、JR奈良駅からでも奈良公園等まで歩いて行けない距離ではない)。そんな中、JRの強みと言えば、近鉄ではカバーできない梅田エリアや新幹線乗換の新大阪に直結できる点と、インバウンド客にとってはジャパンレールパスやJRの外国人向けのパスが使える点でしょう。ただ、首都圏~奈良の移動は京都駅利用が主流なので、新大阪での新幹線乗換の需要は必然的に岡山・広島・福岡・鹿児島等、山陽・九州新幹線に限られます。
そんな中で今回、臨時でお試しとして走り始めた、京都~奈良の特急”いにしへ”。ターゲットとする層は、間違いなくインバウンド客をはじめとした、観光客向けでしょう。
近鉄と比べると奈良駅の立地条件はどうにもならない他、大阪方面と異なり、京都側のターミナルは同じ京都駅であり、JR・近鉄ともに首都圏へ直結する新幹線へすぐに乗換もできます。JR奈良線の強みと言えば、上記の外国人のレールパス利用者に加え、近鉄ではカバーできない、伏見稲荷や宇治の観光エリアに直結できる駅を持っていることであり、稲荷・宇治・奈良を周遊する観光客を取り込めることであると言えます。観光客向けであれば、日頃は快速が通過する稲荷駅への停車は必要と言えるでしょう。
そして、京都は近年オーバーツーリズムが深刻な問題となっていて、それを少しでも緩和し、宇治・奈良方面へ分散させることに加え、奈良線の快速・普通の混雑を避けて、特急でゆったりっと移動したいと言ったニーズも取り込めるでしょう。
上述の大阪方面と同じく、京都~奈良の快速でも一部座席を有料指定席化した”うれシート”が昨年からサービス開始していますが、付加価値は着席保証のみであり、その他の設備は何ら変わらず、正直なところ物足りない点は否めません。やはり同じ有料座席を利用するなら、特急車両でリクライニング座席を求めるニーズは当然あると言えます。
5/18に今回の臨時運転が終了しますが、利用状況次第で、次の運転計画が発表されるのか、気になるところです。まずは運転日を増やして、インバウンドをはじめとした、一般の認知度を広め、定期化への可能性を探っている、と言えます。また情報があれば、当ブログでも取り上げます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
京都駅にて、臨時特急”いにしへ”に使われた、”くろしお”用の289系。奈良線に特急が走ることは長年なく、珍しい光景なだけに多くの人がカメラを向けていたのが印象的。しかも、前面には国鉄式のヘッドマークと逆三角形のシンボルマークも。JR西日本の特急列車、特に287系・289系は何のマークもなく味気ないだけに、日頃から何かしら装飾が欲しい。

①今回の運行予定など
まずは、JR西日本から公表された、こちらのリリースから今回の運行予定などを。
この春、JR奈良線に臨時特急「いにしへ」号が登場!
●列車名:いにしへ個人的な話ですが、私は京都市伏見区出身で、JR奈良線の沿線と言うこともあり、最初にこのリリースが発表された時は、驚きとともに、歴史的なことであると感じました。過去には奈良線を経由して、京都から和歌山方面の特急・急行が走っていた時期はありましたが、それも約35年も前の話となり、何と言っても、長年別料金が必要な特急等が走ることがなかった路線でしたので。
●運転日
4/19(土)、4/20(日)、5/17(土)、5/18(日)
●ダイヤ
京都9:41⇒宇治9:57⇒奈良10:36
奈良16:14⇒宇治16:45⇒京都17:03
●使用車両289系3両編成(特急”くろしお”用の車両)
●全車指定席、指定席特急料金1,290円、チケットレスもあり、別に乗車券・ICカードが必要
●記念乗車証の配布など、おもてなしあり
②指定券の確保

そんな歴史的なことでもありますので、ぜひこの運行期間中、可能なら運行初日に乗車することができればと思い、早速e5489にアクセスし、指定席を取ろうとしますが、空席状況を見ても、やはり珍しさがあるのか、なかなか指定席が取れません。
ただ、ここで諦めるのはまだ早く、キャンセルが出ることはあり得るので、粘り強く頻繁にe5489にアクセスしたところ、運良く4/19の京都行きの指定席が取れたので、これに乗ることにしました。
駅の窓口や券売機なら特急料金が1,290円のところ、ネット予約のe5489チケットレスを使うと、ほぼ半額の650円。これはもう、e5489のチケットレスを利用しないと損です。ただ、乗車券に関しては別にきっぷやICカードを用意しないといけないので、完全なチケットレスとは言えないところが残念です。こう言ったところが、日本の鉄道でネット予約やチケットレスの普及の妨げになっているところは明らかなので、やはり乗車券部分も含めて、ネット予約をすれば、あとは自宅プリンターで印刷するか、アプリでQRコードを表示させるだけで乗車できるようにすることを、急ぐ必要があると感じます。
③実際に乗車、その前の奈良散策など
JR奈良駅から特急”いにしへ”乗車の前に、奈良を色々と散策してみようと思い、奈良公園や東向商店街、ならまちなどを散策しました。観光客が多く、大部分は外国人でした。ただ、京都ほどの混雑ではなく、京都に比べると、まだオーバーツーリズムの問題は少ないと言えます。
奈良公園のシカ

東向商店街を歩く

関西の方には説明するまでもありませんが、関西以外の方には近鉄奈良駅との間違いには注意です。近鉄奈良駅とJR奈良駅は徒歩で約15分・約1km程度離れていて、奈良公園や東大寺など、奈良市の中心部に近いのは近鉄奈良駅です。JR奈良駅は中心部からは少し外れたところにあります。近年は近鉄奈良駅には奈良公園前と言う副駅名が付けれれましたが、個人的にはJR奈良駅との混同を避けるには、正式な駅名を奈良公園前に変更することが望ましいと言えます。
近鉄奈良駅の副駅名に「奈良公園前」を設定します
15:30頃にはJR奈良駅に戻り、本題の臨時特急”いにしへ”に乗車することにします。
かつてのJR奈良駅の駅舎は高架化とともに駅としての役割は終えたが、現在は観光案内所として使用

改札付近の発車案内表示、京都方面は臨時特急の表示。大阪方面には近年定期化した”まほろば”の表示も。将来的に、”まほろば”と並んで、定期化もあり得るのでしょうか?この春から走り出した、”まほろば”の専用車両のPRも。10年ほど前にこのような特急の表示が並ぶこと、誰が想像したでしょうか?

ホームの発車案内表示、臨時特急の表示。

使用車両は289系だが、奈良線では221系・205系が主流なこともあり、今の時代にあってもインバータ車両が走ることが日頃はないので、奈良線でインバータ車両が走ることもまた歴史的と言える。

国鉄式の逆三角形シンボルマークとヘッドマークにズームイン

車両の表示は”特急 京都”

偶然居合わせた利用者が、指定席特急券なしでは乗れないことなど、乗り間違いがないよう、何度か放送が流れてました。京都~奈良と言うこともあり、外国人も多いことから、英語や中国語でも放送が流れていました。
奈良駅の駅名標とともに

16:14、定刻通り、奈良駅を発車。奈良駅の駅員から横断幕で見送られます。”奈良を離れるのに、ようこそちゃうやろ”、と少し突っ込みたくなりますが(笑)

指定席は満席でしたが、実際には少しだけ空席があったので、直前のキャンセル等が出たのでしょうか?多くは鉄道好きな方が中心と言え、さすがに一般の利用者にはまだ認知されていない、と言ったように思えます。
車内、特急”くろしお”と何ら変わらない

車内放送ですが、特急”くろしお”のような一般的な自動放送ではなく、AI音声の放送を日本語・英語で事前に録音し、それをタブレットから車内放送マイクで拾って、放送する仕組みだったようです。臨時であれば、肉声放送のみとなるところ、そこまですると言うことは、将来的に走らせる予定があるのでしょうか?京都~奈良は外国人の利用も多いことから、英語放送まで用意した点は評価できます。
今の時代、指定席に指定された席に座っていれば、車内改札はありませんが、今回は上述の通り、記念乗車証が配られました。

途中の車窓は、日頃の奈良線と何ら変わりありませんが、このように特急車両から眺めるのは何か非日常なところがあります。特に、快速も含め、全列車が停車する木津・玉水・城陽・六地蔵・東福寺を営業列車が通過することは、日頃の奈良線なら絶対にあり得ないだけに、こちらも非日常です。そして、途中の沿線でも奈良線に特急が走ることは珍しいこともあり、多くの人がカメラを向けているのが印象的でした。
国鉄分割民営化以降、奈良線も複線化が進み、近年は京都~城陽が全線複線となりましたが、城陽以南は現在もほとんどが単線のまま残っていて、途中、棚倉と山城青谷で反対列車待ち合わせで停車。奈良線の城陽以南は街の外れを通ることが多く、利用者も少なくなることから、城陽以北や西側を走る近鉄京都線と比べても、まだまだ格差が大きいと感じます。
城陽を通過すると、複線区間へと入り、16:45、途中唯一の停車駅である、宇治に停車。ここで少し乗り降りがありましたが、大半は奈良⇒京都を乗り通しです。宇治駅でも乗り間違いがないよう、放送は流れていたと思いますが、外国人で間違って乗ったと思われる利用者を見掛けました。
宇治駅停車中、車内の案内表示器に駅名は流れる

宇治を発車すると、宇治のシンボルとも言える、宇治橋や平等院の辺りを車窓から眺めることになるが、これも特急車両から眺めることはやはり新鮮そのもの。
快速も含め、全営業列車が停車する六地蔵駅も通過。
国鉄時代には、ここに駅すらなかったのに、今では地下鉄東西線との乗換駅となり、周囲には多くのマンションや”momo”と呼ばれる大型ショッピングセンターもあるなど、開発が進み、JR奈良線で一番大出世した駅と言えるでしょう。その分、並走する京阪宇治線の利用者減少と言う点もありますが。
六地蔵駅を通過し、山科川を渡ると京都市伏見区に入ります。先述した通り、私は京都市伏見区でJR奈良線沿線の出身と言うこともあり、ここを特急車両で通過することは新鮮そのものです。そのような通過シーンを動画で撮影しています。
桃山駅通過、伏見の街を通過する
近年は千本鳥居などが外国人観光客に人気の伏見稲荷大社が目の前にある、稲荷駅を通過。もし”いにしへ”を定期化して、観光客向けとするなら、稲荷駅にも停車と言うこともあり得るでしょうか?
伏見稲荷大社の最寄り駅、稲荷駅を通過
稲荷駅を通過すると、終点京都駅到着はすぐ。このあたりで、京都到着の放送が流れました。
東福寺駅を通過、鴨川を渡る
17:03、定刻通り、終点京都駅に到着。定期列車の合間を縫って走るようになっているダイヤと言うこともあり、通常の快速よりも時間はかかりましたが、色々と楽しんでいて、特急車両の座席と言うこともあり、あっという間に着いた感じでした。
京都駅は奈良線の8番のりばに到着。通常の列車も、のりばを変更する措置が採られていました。向日町の車庫に回送するまで、しばらく8番のりばに停車していることもあり、隣の7番のりばに移動して、撮影できる時間もあったほどです。
京都駅8番のりばに停車中

京都駅、奈良線の駅名標とともに

”サンダーバード”と並ぶ、思えば両者ともに北陸を走った車両同士

京都駅にて、”いにしへ”運転に関する告知

京都駅でも、奈良線を特急が走ることは珍しいこともあり、居合わせた多くの利用者がカメラを向けているのが印象的でした。
④定期化への可能性
さて、この臨時特急”いにしへ”。まだ試しに臨時で走り出したばかりと言うこともあり、一般の利用者への認知はまだ低いですが、今後の定期化への可能性を少し考えたいと思います。
まず個人的な推測ですが、恐らくは大阪方面の”まほろば”と同じく、まずは試しに始めてから、認知度を広め、状況を見て、徐々に定期化への可能性を探っているのでは?、と思えます。
奈良方面を見ると、ご存じの通り、近鉄特急の存在感が圧倒的なこともあり、国鉄・JRが特急を走らせても入る余地はないと言われ、長年沖縄県を除き、JRの特急(新幹線を含む)が一切走らない県にもなっていたほどです。特に、JR奈良線に関しては、近年は京都~城陽が全線複線となり、快速・普通の本数が増え、便利になりましたが、国鉄時代末期までは単線・非電化の時代が続き、京都~奈良は近鉄京都線と大きな格差がありました。
大阪方面の”まほろば”に関しては、近年のおおさか東線開通を機に、観光客向けに臨時で新大阪・大阪発着で奈良方面へ運行開始し、近年は土休日に定期化。平日には通勤客向けに”らくラクやまと”を運行の他、快速の一部座席を有料化した”うれシート”もサービス開始。さらに、この春からは北陸新幹線開業で余った車両を使って、新たに奈良向けに特化した装飾で”まほろば”専用車両を登場させるところまで来ていて、奈良方面への有料座席を強化していく施策が見られます。
正直、奈良方面の本数やネットワークに関しては、近鉄特急が圧倒的で、近鉄奈良駅の方が立地条件の良さも圧倒的です(ただ、上述の通り、JR奈良駅からでも奈良公園等まで歩いて行けない距離ではない)。そんな中、JRの強みと言えば、近鉄ではカバーできない梅田エリアや新幹線乗換の新大阪に直結できる点と、インバウンド客にとってはジャパンレールパスやJRの外国人向けのパスが使える点でしょう。ただ、首都圏~奈良の移動は京都駅利用が主流なので、新大阪での新幹線乗換の需要は必然的に岡山・広島・福岡・鹿児島等、山陽・九州新幹線に限られます。
そんな中で今回、臨時でお試しとして走り始めた、京都~奈良の特急”いにしへ”。ターゲットとする層は、間違いなくインバウンド客をはじめとした、観光客向けでしょう。
近鉄と比べると奈良駅の立地条件はどうにもならない他、大阪方面と異なり、京都側のターミナルは同じ京都駅であり、JR・近鉄ともに首都圏へ直結する新幹線へすぐに乗換もできます。JR奈良線の強みと言えば、上記の外国人のレールパス利用者に加え、近鉄ではカバーできない、伏見稲荷や宇治の観光エリアに直結できる駅を持っていることであり、稲荷・宇治・奈良を周遊する観光客を取り込めることであると言えます。観光客向けであれば、日頃は快速が通過する稲荷駅への停車は必要と言えるでしょう。
そして、京都は近年オーバーツーリズムが深刻な問題となっていて、それを少しでも緩和し、宇治・奈良方面へ分散させることに加え、奈良線の快速・普通の混雑を避けて、特急でゆったりっと移動したいと言ったニーズも取り込めるでしょう。
上述の大阪方面と同じく、京都~奈良の快速でも一部座席を有料指定席化した”うれシート”が昨年からサービス開始していますが、付加価値は着席保証のみであり、その他の設備は何ら変わらず、正直なところ物足りない点は否めません。やはり同じ有料座席を利用するなら、特急車両でリクライニング座席を求めるニーズは当然あると言えます。
京都~奈良(近鉄奈良)の運賃・料金最後に運賃・料金面について、特にチケットレスを使わない場合、JRは近鉄特急と比べても、かなり割高になります。本数やネットワークと合わせて、この面もJRは不利となります。
近鉄
運賃:760円、特急料金:520円
JR
運賃:720円、特急料金:1,290円(チケットレス650円)、うれシート指定席料金:530円(チケットレス300円)
5/18に今回の臨時運転が終了しますが、利用状況次第で、次の運転計画が発表されるのか、気になるところです。まずは運転日を増やして、インバウンドをはじめとした、一般の認知度を広め、定期化への可能性を探っている、と言えます。また情報があれば、当ブログでも取り上げます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。









