当ブログでは、まだ取り上げていませんでしたが、今回は京阪の運賃改定について取り上げます。
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京阪:京阪線および大津線の旅客運賃の改定申請が認可されました ○2025年10月1日に運賃改定を実施
京阪:1995 年以来30年ぶりの京阪線・大津線旅客運賃の改定 に向けた申請を行いました

京阪の運賃改定:主な内容
◎実施時期:2025年10月1日より
◎京阪線・大津線ともに対象
◎普通運賃は平均で約11.4%改定、通学定期の値上げ率は抑える
◎バリアフリー料金は廃止
◎プレミアムカー料金、中之島線・鴨東線の加算運賃、石清水八幡宮参道ケーブルは改定なし
◎運賃改定の背景:コロナ禍等による利用者減少の他、物価上昇、人件費高騰、ホームドアなどのバリアフリー設備への投資、新型車両の導入、変電所など各種設備の維持更新、激甚化する自然災害への対応など。
◎今後も公共交通の使命を果たし、安全・安定輸送を続けるには、経営努力だけでは限界を迎え、運賃改定が不可欠。消費税増税以外での値上げは30年ぶり。
90年代をピークに乗客が減り続け、特にコロナ禍以降、苦しい状況が続いていると予想できる京阪。他の関西大手私鉄と比べても、大減便のダイヤにエスカレーター撤去、電球間引きと、なりふり構わない、かなり大胆なコストカットが目立つ中での、今回の運賃改定。正直、利用者から理解が得られるのか、と思えるところはあり、国土交通省のパブコメの中にも、そんなコメントが目立っていたほどですが、最終的には正式に国土交通省から認可されたことになります。その前に、ダイヤ改正が行われ、基本的には12分間隔へ増便が実現するなどしたところです(必ずしもメリットばかりではないが)。
国土交通省:京阪電気鉄道株式会社の鉄軌道事業の旅客運賃の上限変更認可申請 に関する意見募集の結果について


個人的には、この30年の間に消費税率の引き上げ以外では運賃改定を行なっていなかったこともあり、またこの間に物価高や人件費高騰が続き、さらにバリアフリーや安全に関する投資などの必要性を考えると、値上げ自体は否定しません。ただ、値上げをするなら、大胆なコストカットを見直した上で、利用者や社員に対して、サービス向上や待遇改善と言った、値上げに見合うだけのことを、しっかりとしていただきたい、とは感じます。

関西大手私鉄では、他に近鉄と南海は既に運賃改定済みで、残るは阪急・阪神のみとなりますが、物価高や人件費高騰などを考えると、阪急・阪神も近いうちに、追随するでしょう。

以下、各方面別に競合他社とも比較した上で、見て行くことにします。

※京阪の運賃に関しては、”改定前⇒改定後”となっている他、他社の運賃は2025年4月現在の運賃となっています。
初乗り
京阪線:170円⇒180円
大津線:170円⇒200円

参考:関西他社
JR西日本(大阪電車特定区間内)150円
阪急 170円
近鉄 180円
阪神 160円
南海 180円
大阪メトロ 190円
京都市営地下鉄 220円
初乗りに関しては、値上げ幅は抑えられ、京阪線に関しては近鉄・南海と同水準。これでも大阪メトロよりは安くなっています。それにしても、京都市営地下鉄のアンビリバボーな高さが目立つ、と言ったところでしょうか。

大阪都心部~京都都心部
淀屋橋~三条 430円⇒490円
淀屋橋~七条 430円⇒490円


参考
阪急(大阪梅田~京都河原町)420円
JR(大阪~京都)580円
この方面は言わずと知れた、京阪間3社が競合する区間。
ただ、京都市内でも、これら3社が選べるエリアは、烏丸五条の近辺に限られるでしょう。これらのうち、2社が選べるエリアに関しても、対JRでは七条や京都駅近辺、対阪急では三条や四条近辺でくらいであり、大阪市内から(へ)向かう場合、京都市内の東山や左京等に関しては、京阪が便利なエリアです。
京阪の運賃設定と言えば、この方面で競合する他社が存在すること、また端から端まで、より長い距離を乗ってくれて、特に阪急とは互いに京都市内の繁華街となる、三条・四条近辺を発着し、運賃も安価なことから、同じ京阪間で阪急との運賃差は、なるべく拡がらないように設定している、と言う意図が感じられ、今回の値上げによって、運賃差が拡がるとは言え、何としてでも400円台には抑えたかった、と考えられます。そして、近い将来、阪急も運賃改定をする、と見込んでいるところもあるでしょう。
逆に、七条や京都駅近辺では、JRとの運賃差が縮まることになります。これにより、梅田をはじめ、大阪市内でJRの駅へ向かうとなれば、よりJR優勢となりそうです。大阪メトロに乗り換えるなら、京阪の方が乗り換えやすいですが。



枚方・寝屋川・交野方面
枚方市~淀屋橋 350円⇒400円
三条~枚方市 370円⇒420円
淀屋橋~寝屋川市 320円⇒360円
三条~寝屋川市 410円⇒460円
河内森~京橋 370円⇒420円

参考
JR(河内磐船~京橋) 320円
この方面は阪急・JR京都線とは淀川を挟んでいることから、競合区間がなく、完全に京阪が独占できる区間です。それに、沿線人口も多く、京阪の駅の乗降客数ランキングでも、京橋・淀屋橋に次いで、枚方市駅が3位、寝屋川市駅が4位に入るなど、全ての京都市内の駅を上回る乗降客数のある駅も存在するほどであり、京阪は昔からこの方面、特に10~20kmの運賃を、他の関西大手私鉄と比べても高めに設定しているほどです。今回もそれは変わらず、さらに割高になっている感が否めません。特に、枚方市~淀屋橋は、淀屋橋~三条と比べても90円しか差がありません。しかも、寝屋川市や香里園に関しては、値上げの割には、3月のダイヤ改正で、昼間の実質的な本数が減らされり、快速急行削減で京都方面との行き来が不便になった経緯もあるなど、デメリットを被ることになります。ただ、それでも競合区間がないことから、問題ないと判断されたのでしょうが、長期的に見ると、沿線住民が他のエリアへの流出を招く可能性は大いにあり得ます。
あと、交野市内を見ると、JR学研都市線と競合する区間がありますが、対大阪市内で考えると京橋はもちろん、さらにその先の東西線や神戸・宝塚方面へ直通で行ける、JR学研都市線が優勢であり、例え運賃値上げがなくても、この状況を覆すことは難しいでしょう。


伏見・宇治方面
丹波橋~七条 220円⇒240円
中書島~淀屋橋 410円⇒460円
六地蔵~七条 280円⇒320円
六地蔵~三条 320円⇒360円
宇治~七条 320円⇒360円

参考
JR(桃山~京都) 200円
JR(六地蔵~京都) 200円
JR(宇治~京都) 240円
近鉄(丹波橋~京都) 240円
京都市営地下鉄(六地蔵~三条京阪)330円
この方面、対大阪方面で考えると、今後も所要時間・運賃ともに完全に優勢なことから、ここは変わらずでしょう。
一方で、対京都都心方面で考えると、特に10~20kmの運賃が京阪とは対照的に、安価な設定となっている、JR奈良線との運賃の差が拡がるように思えます。
しかも、JR奈良線は近年複線化でより便利になり、さらに今年は大阪電車特定区間の拡大により、むしろ値下げを実現したほどです。上記の枚方・寝屋川と同じ運賃体系を維持していることが問題のような気がします。ここはJR奈良線との競合区間であることから、特定運賃を適用して、何とか七条~宇治が300円を上回らないよう、運賃の差を縮めることができないものなのか、と思うところがあります。
さらに、六地蔵~三条(京阪)に関しては、アンビリバボーな初乗りとは異なり、京都市営地下鉄東西線の方が運賃が安くなり、しかも乗換もなし、始発駅で座れると言う点から、こちらも京阪には不利な点となります。


大阪市内・守口方面
野江~淀屋橋 220円⇒240円
守口市~淀屋橋 280円⇒320円
京橋~中之島 280円⇒320円

参考
大阪メトロ(野江内代~東梅田) 240円
大阪メトロ(守口~東梅田) 290円
JR(JR野江~大阪) 200円 
JR(京橋~新福島) 180円

梅田へ直接行ける上に、本数も多い、谷町線の優勢が目立つところであり、谷町線がもう少し京阪から離れた、城北公園通りを通っていれば、上手くすみ分けできていたのでは?、と思えます。一方で、どちらかが止まっても、すぐに振替可能、と言うメリットもありますが。
また、谷町線と合わせて、JR東西線やJRおおさか東線の影響も大きいと言え、おおさか東線は開業から6年ほどですが、下記の大阪府統計年鑑を見ると、野江駅の乗車人員は既にJRの方が上回っているほどです。野江近辺から梅田へ行くなら、淀川を2回渡り、一旦新大阪へ遠回りするとは言え、運賃面ではJRおおさか東線が一番有利です。正直、この状況なら京阪本線大阪側の普通が4両に減車される背景も見えてくる気がします。逆に、対京都方面は、運賃面では京阪が優勢ですが、快速急行削減で京都方面との行き来が不便になった点は否めません。



大津方面
京阪山科⇒びわ湖浜大津 240円⇒280円
三条京阪⇒びわ湖浜大津 430円⇒470円

参考
JR(京都~大津) 200円
JR(山科~大津) 180円
京都~大津に関しては、もう運賃・所要時間、いずれもJRが圧倒的優勢です。やはり、地下鉄東西線開通後に、運賃が大幅に上昇してしまったことが乗客逸走の原因となっていることは明らかであり、京都市と大津市が日頃からの利用促進に向けて、東西線と乗り継いで、さらに運賃割引にするなど、抜本的な改善が必要と言えます。
一方で、石山坂本線に関しては、大津の市内電車と言った感じで、JRの駅からのフィーダー輸送を担っている面もありますが、赤字であることは変わらず、長期的に維持するには、大津市による公的支援も必要と言えるでしょう。
ちなみに、同じ京阪の路線でも、地下鉄東西線開通前から、自社の路線同士で繋がっていた頃からも含めて、京阪線と大津線では、運賃体系は完全に異なっていて、大津線の方が運賃は高めに設定されていますが、8~12kmのように、一部はなぜか京阪線の方が高い、と言う逆現象が発生するところもあります。
そして、三条(京阪)からの場合、淀屋橋も浜大津も運賃がほとんど変わらない、と言うアンビリバボーとも言える状況も発生しています。

以上、京阪の運賃改定について、取り上げました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。